私が恩返しをしたい本として最初に取り上げたいのが、
「赤毛のアンの手作り絵本Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」(鎌倉書房・白泉社出版)
である。
この本は
赤毛のアンの物語をベースにした絵本と、料理レシピとが融合した一冊。
美しいカラーの挿し絵が配置された物語の右ページ、
その物語に関連するお料理や作品が写真で表現された左ページという、
見開きでセットとなる構成で進む本。
学校の図書室にあって、借りては返し借りては返しを永遠ループの如く繰り返し、
本気で、何度読んだかわからないくらいに読んできた本。
しっかりした装丁の大判だから、一冊を借りて帰るのが結構億劫になるくらいに
ずっしりと重かった。
それでも、それに懲りず
私は借りて、期限が来たらば頑張って学校に持っていって返却し、
そして、またアンの世界に浸りたくなったら図書室に借りに行き、家に持ち帰っていた。
それだけ好きなら、買えばいいじゃん!って自分でも思うくらいのハマり具合だったのだが
この本、一冊2,500円と、まあまあのお値段で学生当時の私にはとても買えなかったのだ。
そんな子どもの事情で大好きな本にも関わらず手元に置いていなかったのだが
充分大人になってからも、ふと読み返したくなることが幾度もあり、
今年中古本を探して、やっと手に入れた。
(中古本を購入したのは、今は廃版となっており新品を買えないという理由からである)
懐かしい本の表紙をめくると、
読んでいた学生の頃のドキドキ、ワクワクが甦ってきて
(あぁ、やっぱり私、この本好きなんだよなぁ。)
と、改めて認識し直したのだ。
なぜ、それほどまでにこの本に惹かれたのか、そして今もこの本が好きなのか。
改めて考えて、みた。
私、告白すると
この絵本に出会う前は「赤毛のアン」の、アンという少女が好きではなかった。
妄想が激しすぎる、おしゃべりな女の子には全然魅力を感じなかったし
どちらかといえば、嫌いだな、と思っているくらいだった。
だがこの絵本の中のアンは、文庫本で読むアンの濃度をぐんと薄めたような(良い意味で)マイルドさで存在していた。
しかも、この本の挿し絵のアンは、私の想像するアンにすごく近くて、親近感が湧いた。
そのお陰もあり、感情移入もできていった。
挿し絵はどのページも完成度が高く、本当に美しくて
読み手の想像力を膨らましてくれた。
柔らかなタッチのイラストは、この絵本の価値を最上レベルへと上げてくれていたと思う。
また、写真のページも物語を現実のものに落とし込んでくれる役割を果たしていた。
当時、海外のお料理や小物たちを目にする事もなかったので10代だった私には印象に残った。
今考えれば
あの時の海外に想いをはせる日々が、私を海外に行きたいという夢を生んでくれたのだと思う。
そう。
「海外に行きたい!」という、夢の種を蒔いてくれたのがこの本だったのだ。
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